作品番号49「ヒトガタの想い・外伝 ~貴女を求めて」アップ


先月、「ヒトガタの想い」全六話のアップが完了しました。

次の作品に取りかかる前に、この「ヒトガタの想い」の番外編ともいうべき「ヒトガタの想い・外伝 ~貴女を求めて」をアップしました。

 夜風が耳を通り抜けてゆく。死体だけが残された地上で、永琳はぼんやりと月を見上げ
ていた。夜空を照らし、銀の満月が永琳に光を浴びせる。顔も服も血まみれになって、永
琳は月夜の中にたたずんでいた。

「私は……何を失ったのかしらね……」

 ぽつりと永琳は呟く。イルルナーダの言ったことを、永琳は理解できなかったわけでは
ない。しかし永琳にとって、永遠の命を手に入れることは必ずしも生命を捨てることには
つながらないのだ。
 もし確実に失ったものがあるとすれば、それは月の生活。しかし、今はそんなものに興
味はない。輝夜と共にいることこそが永琳の望みであり、そう考えればむしろ輝夜のいな
かった月の生活など捨てたほうがよいものだった。
 しかし、この胸にある虚無感はなんなのだろうか。永琳にとって決して多くはない死体。
おそらくこれのせいではない。命を失ったわけでもないし、かつての生活は失っても悲し
くはない。だが、永琳は確かに空虚さを感じていた。

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