ようやく第一話が終わった。気がつかずに、第一話の最後の数行だけ、先月アップし損なったていた。ずっと第一話が続くと思っていたのかな。
第二話は「雪景色」である。小説の舞台になっている屶瀬島は夏に雪が降る。
「夏雪」だ。
「夏雪」。それがこの屶瀬島最大の特徴である。
太平洋側に位置する屶瀬島は、黒潮の影響もあって、冬でも割と温暖なのだ。
だというのに、この島では、一年のうちで最も暑いはずの五月から九月にかけて雪が降る。
夏に降るこの雪は、故に夏雪と呼ばれている。
これは気候云々という以前に、地球上の自然現象としておかしかった。夏に雪が降るのは、極地でもあまりない。まして四十度にも満たない緯度にある屶瀬島の夏に雪が降る訳がないのだ。
だが、現にこうして雪は降り積もっている。気温も氷点下を下回る程に落ち込むのだ。ただ気温は雪が降らない日は他と変わらない。本格的に夏になると、雪の日には信じられないくらい下がったりするが、翌日晴れると何事もなかったかのように三十度を超える。日々の気温の上下が世界一激しい場所になるのだ。
奇妙なのは、そうした一連の現象が屶瀬島にしか起こらない事である。わずか八百メートル離れた本土にはひと欠片も雪は降らない。それどころか、天気も全く違う事が多い。雪を降らせる雲は、屶瀬島の上空だけに発生するのだ。
これまで何百人という学者がこの謎を解明しようとした。しかし、誰一人として解答できる者はいなかった。地理的にも海流にも、風も気圧も、その他色々な要素も何一つとして関係なかったのだ。ただ、正体不明の雲が突如現れ、雪を降らして消える。その理由は、誰も説明できなかった。
それでも、屶瀬島には、今なお静かに雪は降り続けている。
今日は、その夏雪の初雪だったらしい。槙人はベッドから這い出ると、大きく伸びをした。
夏雪なんてどこから発想したのか。オリジナルだねえ。アニメに「夏雪ランデブー」というのがあるらしいが、天馬の作品はそれよりも10年は古い。
ようやくオリジナル(独創)らしい視点が見えた。嬉しいことだ。
今日お墓参りに行ったら、どなたかがお花を供してくれていた。何年ぶりかな。忘れないでくださってありがとう。そしてこれも嬉しいことだ。
忘れられること程寂しいことはない。