流星忌 ~雪夏塚 第七話(その4)アップ


 丸9年。10年目の流星忌(祥月命日)です。
 9年前は梅雨が明けたのが、8月1日。翌8月2日は朝からカーッと暑かったのを昨日のように覚えています。
 今年も梅雨は長く、あの時ととても似ている夏になりました。それでも9年も経つと、心もちが随分変わってきていて、「やさしい悲しみ」がじわりと滲み出てくるだけになりました。

 今朝は、天気が不順で、午後には大雨になるという事でしたので、朝6時にお墓参りに行きました。そうしたら、日頃のお墓参りでは見られないケシキを見る事ができました。霊園までの道すがら、夜にでも轢かれたのでしょう、野鳥の死骸がありました、元荒川の河川敷では人々が太極拳をしていました、モーニングを運んでいるおばさんが道を横切りました。

 人の営みが始まったところでした。霊園はまだ開いていなかったので、セキュリティコードを入力して解錠しました。お墓でもセキュリティ気にするんですね。

 何となく気分的に一つの時代が変わったと思います。10年前とは全く違う人間になってしまいましたが、それなりにレジリエントになった気がします。

 今回の更新は先月の続きですが、雪夏塚もだいぶ変わってきて、SF的なところから兄と妹の恋愛小説になってきました。妹の綾華が死ぬというのに対して、兄の槙人が死なせないという場面は、興味がありました。天馬流星が死をどのように回避すると考えていたのか。

「・・・どうやって?」
 目を真っ赤に腫らして、綾華が尋ねる。
「簡単だ。本当にお前に願いを叶える能力があるのなら・・・願えばいい。願いを叶える能力を、今まで叶えた願いを・・・消してくれって」
 願いを叶える能力が嘘でないなら、それが作り出した嘘は消せる筈だ。そしてそこから「真実」が姿を現せる。

願って、願って、生きていてほしかったと10年近く経ってもそう思う。

流れ星第二工房

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