小  説

08-だからこの手は、離せない

 冬。
それなりに騒がしかった夏が終わり、特に何事もなかった秋も過ぎ、きっといつもどおりになるだろう雪の季節がやってきた。
例年より雪の結晶が大きい気もするが、冬が旬の妖怪たちには別段どうでもいいことであった。
  湖畔に住む妖精たちにとっても、それは同じことだった。
「それっ!」
「わぷっ!やったなあ、このお!!」
「当たんない当たんない」
「うがー!!」
 今日は特に気温が低く、湖にも氷が張ってしまっている。しかし、そこで雪合戦をしている妖精の姉妹には、むしろ足場が増えてありがたかった。
「そりゃっ」
「あうっ!も〜、怒ったぞ〜!凍符……」
「えいっ!」

  べしょっ。

スペルカードを放とうとした少女の顔を、先ほどよりも大きな雪玉が直撃する。
「ぺっぺっ!」
「チルノ、スペルカードは禁止って言ったじゃない」
 緑色の髪の少女が、呆れ顔で相手に言う。
「だって〜」
「狙いはいいんだけど、チルノの球って直線的なのが多いから、予測してれば簡単によけられるのよね」
 くすくす笑いながら、少女は青い髪の妖精に近づく。
「うぅ〜」
「どうしたの?」
「……っと見せかけて!てえぇぇぇい!!」
「きゃあっ!!?」
 うずくまった妹を見てその顔を覗き込んだ姉だったが、それは妹の罠。至近距離からまともに雪玉を食らってしまった。
「あはははは!反撃開始ぃ!それそれそれそれぇ!!」
 あらかじめ足元に作っておいた大量の雪玉をかかえ、妹は積年の恨みを晴らすかのごとく、それを次々にぶつけていく。
「ちょっちょっちょっ!!待って、チルノ待って!」
「やっだよー!とりゃあああ!!」
「きゃー!!」
 逃げ惑う姉に容赦なく雪玉はぶつけられる。そして、真後ろを向いた瞬間を狙い、妹は雪玉を姉の後頭部に思い切り投げつけた。
 ばしっ、といい音がして、姉がその場にすっころぶ。
 その直後、どぼんという水音がした。
「あははは!お姉ちゃん、水に落ちたー!」
 妹はけたけたと姉の無様を笑う。そのまま、姉が這い上がってきたときのことを考え、大きな雪玉をこしらえる。
「……よーし、準備おっけー。さあこい、お姉ちゃん!」
 いつでも巨大雪玉を投げられるように構え、妹は姉の落ちた辺りを見つめる。
「まだかなー。すっごいのお見舞いするのに……」
 だが、時間がたっても姉は現れない。
「あれ?」
 もう這い上がって隠れているのだろうか。妹は辺りをきょろきょろと見回すが、姉の姿はない。
「お姉ちゃん?」
 姉を呼ぶ。返事はない。
「……お姉ちゃん?お姉ちゃん」
 だんだん不安になってきて、妹は姉が落ちたところに近づいてみた。
「……お姉ちゃんっ!!!」

  氷が割れていたのはその一部分だけで。
 落ちてしまった後真っ直ぐに浮いてくることがなかったのだろう。

 決して薄くない氷の下。
   刺すほどに冷たい水の中に、動かない姉は閉じ込められていた。







 普段参拝客も普通の客も滅多に来ない博麗神社。普通でない客はたまに来るが、冬になるとその回数も大幅に減る。 そのため、博麗霊夢は普段以上に退屈だった。
「あー……ヒマ」
 本当は家のあちこちに開いている小さな穴をふさがなければならないのだが、コタツの中は別世界。自分がぬくければそれでよかった。 故に、コタツの外に忙しいことがあっても、コタツの中にいる霊夢は暇だった。
「……人間も冬眠できたらなー」
 みかんの皮をむきながら、本当にやったら確実に冥界行きの発言をする。
 雪の降る音も聞こえるくらい、静かな日。
 それを豪快にぶち破ったのは、入り口を壊して転がり込んできた妖精の叫び声だった。
「たっ助けて!!」
「……チルノ?」
 聞き覚えのある声が玄関から聞こえ、霊夢は顔を上げた。しかし、体がコタツになじんでいるので、外には出なかった。
「いないの!?上がるよ!?」
 答えを言う前に、迷惑者がドスドスと廊下を歩く音が聞こえてきた。
「あー、ちょっと待ちなさい!!」
 体重の軽そうな氷精にしては重い足音に首をかしげながら、霊夢はコタツを這い出て廊下に顔を出した。
「い、いるなら言いなさいよ!!」
「勝手に上がりこんで何を偉そうに……って、あんた」
 霊夢がそこで見たのは、自分より確実に体の大きい少女を背負って息を荒げているチルノの姿だった。
「どうしたの、あんた」
「いいから、助けてよ!!」
「いや、いきなり助けてって言われても……」
「早く、お姉ちゃんを助けてってば!!」
 錯乱しているのか、チルノはその場でわめき散らす。
「お姉ちゃんって、あんたの背中にいるの?」
「早く!!」
「わ、分かったわよ」
 実際には何も分かっていないが、あまりにチルノが切迫しているので押されてしまった。
「とにかく重いでしょ。貸しなさい」
「う、うん」
 チルノから姉という人物を降ろさせ、抱きかかえる。
「冷たっ!なんでこんな濡れてんのよ!」
 途端に、限りなく0度に近い水に触れ、思わず霊夢は飛び上がった。
「……湖に、落ちたから」
 チルノが、しょげ返った声で答える。
「何やってんだか。とにかく、服脱がせないと。こんな寒い中濡れっぱなしで来たら、凍え死ぬでしょ。氷精だからどうだか知らないけど」
 チルノの姉、大妖精の服を脱がせ、自室にある布団に寝かせる。
「チルノ、タオル持ってきて。廊下の先の脱衣所にあるから」
「わ、分かった」
 後ろで様子を伺っていたチルノは、大急ぎで廊下に飛び出した。
 霊夢は、改めて大妖精の様子を見てみる。
 はっきり言って芳しくない。濡れねずみのままここまで飛んできたのだから、肺炎は必至といえる。事実、明らかに高熱が出ていた。 それなのに顔は真っ青で、生きた感じもしない。これだけ体が冷えているのに、震えてもいない。荒いとはいえ、呼吸をしているのが 救いだった。
「持ってきたっ!!」
 開けっ放しのふすまからチルノが飛び込んできた。持ってきた6枚のタオルから1枚を受け取る。
「もう1枚はあんたが使いなさい。あんたもびしょ濡れでしょ」
 チルノのほうを見ないで、霊夢はそう指示しておく。そのまま、大妖精の体と髪を拭き始めた。
(やっばいなあ……)
 もう1枚を取り、さらにごしごしと体を拭く。乾布摩擦の要領だ。とにかくこの状態では、体温を上げるのが先決だった。
「お姉ちゃん……」
 後ろでチルノの弱々しい声が聞こえる。
「なんで、湖なんかに落ちたの?」
 大妖精の体を拭きながら、霊夢はたずねる。
「え、その……雪合戦してて、あたしの球が当たって……」
「湖にぼちゃん?」
「うん」
「なんですぐ上がってこなかったの?」
「氷張ってた」
「…………」
 それで何故ここに来たのかは訊かなかった。チルノのあの慌てようでは、おそらくまともな返答は期待できない。視界に神社が 入ったからとか、偶然ひらめいたからとかだろう。
 全身をくまなく拭いているうちに、ほのかな温かみがさしてきた。こんなもんかな、と呟いて、もう一度髪を拭いてから、霊夢は 立ち上がった。
「一応大丈夫だとは思うけど、応急処置だからね。間違いなく風邪ひくから、下手すりゃそれで死ぬわよ」
「そんな!どうすれば」
「う〜ん……」
「やだよぉ……。お姉ちゃあん」
 涙でぐずぐずになりながら、チルノは布団に横たわる姉に抱きつく。それを横目で見ながら、霊夢は考える。
(流石に魔理沙でも、命がかかってればふざけた薬を飲ませることはないだろうけど……。風邪の予防なんてのはないかもしれない。 時間もかかるし。となると……)
 もう1つの候補が頭に浮かぶ。しかし、事情を聞いてくれるかどうかは分からない。
 「とにかく、行ってみるか。ダメなら魔理沙ね。チルノ、ちょっと出かけてくるから」
 「どこ行くの?」
 「図書館」







 約30分後、霊夢はお供を1人従え戻ってきた。
「あー、さむさむ」
「人に断熱結界作らせといてそれですか」
「簡易結界しか張れないくせに」
 連れてきたのは、紅魔館の図書館司書の小悪魔だった。チルノは面識がない。
「だれ、それ」
「図書館の司書です」
 それだけ言うと、小悪魔は大妖精の枕元に座った。
「見てのとおりよ」
「そのようですね。でも応急処置は適切ですよ。肺炎は体力次第だと思います」
 大妖精の額に手を置いて、小悪魔は答える。
「そう。なら、そうできる?」
「ええ。この人、風の精みたいですから、エナジーライズも必要ないですね」
「……え?」
 小悪魔は小さな魔法陣を描き、大妖精に乗せる。そのまま呪文を唱え、魔法陣ごともう一度大妖精の胸の上に手を置いた。
「……ふっ!」
 キンッ、という音とともに魔法陣は消えた。
「これでOKです。でも、2日は安静にしてください。3日目からは普通に動けますから」
「あ、そう?2日もおいとくのか……」
 小悪魔はそう言って立ち上がった。小さくぼやいて、霊夢もそれに続く。
「あ……ありがとう」
 一部始終を見ていたが、何もできなかったチルノは、座り込んだまま礼だけ言った。
「いえいえ、どういたしまして」
 にっこり笑って小悪魔は返事をした。
 玄関先まで小悪魔を見送ってから、霊夢は戻ってきた。
「2日間は寝っぱなしらしいけど、その間あんたはどうするの?」
 姉をじっと見ているチルノの背中に、霊夢は問いかける。
「……ここにいる」
 返ってきたのは、予想通りの答えだった。
「……ま、別に咎めはしないけどね。でも、ご飯はちゃんと食べなさいよ。作ったげるから」
「うん……。ありがとう」
 霊夢は部屋を出て、居間に向かう。
「……チルノでも、あんなにおとなしくなることがあるんだ」
 さしあたって、今夜のおかずと寝るところを考えなくてはならなかった。





 チルノはずっと姉のそばにいた。部屋からは一歩も出なかった。食事も、霊夢が持っていかないと摂らなかった。
 自分のせいだから、と一言だけ呟いて。





 2日間、本当に大妖精は寝たきりだった。
 ただ病気らしい様子はなく、心配は要らなかった。
 チルノだけが、ずっとそこに居続けた。

 そして、その翌日。
 朝食を終えた霊夢は、ほとんど食べないチルノのために、自分より少しだけ量の減らした料理を持っていく。それでも チルノは半分以上残すが。
「チルノ、入るわよ」
 一応自分の部屋なのだが、ふすまをノックして霊夢は中に入る。
「あ……」
 そこには、布団から上半身を起こしている大妖精がいた。眠っている間に着せた霊夢の服は、幾分着崩れてしまっていた。
「起きたのね」
「はい……」
 チルノは姉の膝のところで眠っている。大妖精は、ゆっくりと優しくその頭をなでていた。
「ここは、博麗神社でいいんでしょうか」
「いいわよ」
「あなたは……」
「博麗霊夢」
「……ありがとうございます」
 およそチルノの姉とは思えない物腰で、大妖精は礼を言う。
「霊夢さんが、お世話してくださったんですね」
「チルノだとは思わないの?」
「チルノのことです」
 すうすうと寝息を立てている妹を見ながら、大妖精は答える。
「まあ、ご飯とかはね。でも、まずはあんたのことでしょ。体、大丈夫?」
「ええ。とてもすっきりしています」
「そう。よかったわね」
「本当に、ありがとうございました」
 チルノを起こさないようにしながらも、大妖精は深々とお辞儀をする。
「いいわよ、別に」
 その仕草に苦笑して、霊夢は横に手を振った。
「雪合戦の最中に湖に落ちてしまって……」
「チルノから聞いたわ。死にかけてなんだけど、間抜けよね」
「そうですね」
「必死だったわよ、チルノ。あんた2日間眠ってたんだけど、その間ろくに食べもしないでそばにいたわ」
「そう……ですか」
 そんなに、と。大妖精の唇が動いた。
「……食べる?」
 それは霊夢には聞こえなかった。せっかく作った朝食が冷めるので、大妖精はもらうことにした。
「いただきます」
 あたたかな味噌汁をすすり、慣れた箸使いで大妖精は食べ始めた。
「……あんたは猫舌じゃないんだ」
 その様子を見ながら、霊夢は呟く。チルノが何かにつけて熱いものが苦手だったので、手を焼いていたのだ。
「ええ。私は、氷精じゃないですから」
「……風の精、なの?」
 声を落として、霊夢はたずねた。
 なるべくなら聞かないほうがよいことなのは分かっていた。しかし、先日の小悪魔の言葉が妙に気になってしまっていた。
「……よく、ご存知で」
「ちょっと、ね」
 どうでもいい受け答え。朝の静寂。箸と食器の当たる音。
 しばらくの沈黙の後、食べ終えた大妖精のほうが口を開いた。
「……私とチルノは……本当の姉妹じゃありませんから」
「……でしょうね。風の精の妹が氷の精、ってのは、いくらなんでも奇妙だわ」
「……10年以上も、昔の話です」
 ゆっくりと、大妖精は話し始めた。
「この子は……もともと、孤児だったんですよ」
「……親の再婚とかじゃなくて?」
「そんなのは人間だけです。私たちにはそんな概念はありません。この子は、私が昔住んでいた森に……捨てられていました」
 話しながら、大妖精はチルノの頭を撫でる。
「最初に見つけたのが私です。チルノは歩く事もできない赤ん坊で、見つけたときにはひどく衰弱していました。驚いたけれども、 私はこの子を家につれて帰りました」
「けど、捨てられたの?」
「いえ。私の実家は割と裕福だったので、1人増えてもどうということはありませんでした」
 名前のなかった赤ん坊にチルノと名づけたのは、大妖精本人だったという。
「けれど、それは2年間の間だったんです。私の両親が氷精に恨みを持っていて……。同じ氷精だったチルノを…………殺そうとしたんです」
 今でもその事実が信じられない。大妖精の声のトーンが、そこで一際落ちた。
「チルノは……関係ないでしょうに」
「ええ。けど、恨みというものはそういうものなんです。チルノは自分の能力……冷気を操ることに関しては天才的な成長をしていました。 その分、両親を怒らせてしまったんです」
「…………」
「何度もやめてくれるように頼みました。けど、チルノを虐待することは決してやめてくれなかった。いやなら、捨ててこいとまで。 ……チルノの、目の前で……!」
 空いているほうの手で、大妖精は布団をぎゅっと握る。その怒りは、全くの他人である霊夢にも十分分かった。
 親が言う言葉ではない。子供を、完全に要らない「物」扱いなど。
「それだけは絶対嫌でした。私が拾って、私が名前をつけて……。この子が、初めて私をお姉ちゃんって呼んでくれたとき……泣きそうでした。 嬉しくて。子供ながらに、この子がいてくれてよかった……って」
 怒りと涙を抑え、大妖精は話を続ける。
「だから……。許せなかった。両親のあの言葉を聞いたとき、私は決心しました。この家を出ようと……」
 チルノを捨てるくらいなら私が出て行くと。
「当然、両親は反対しました。でも、そんなエゴが通用するでしょうか?反対されたとき、思わず力をぶつけたくらいでしたからね」
 実の両親に、と大妖精は自嘲気味に笑う。
「その次の日には家を出ました。自立できる年齢でもない子供が、さらに小さな子供を引き連れて。5日間もさまよい続けて……そして、 今の家にいます」
 実家からは遠くかけ離れた、湖畔の小さな家。近所の妖精たちに助けられ、ようやく完成した2人の家。
「どこでもない……。そこが、私たちの家です」
 静かに、しかしはっきりと、大妖精は言い切った。
「チルノは知ってるの?そのこと」
 思わず、霊夢はそうたずねた。訊かずにはいられなかった。
「知らないと思います。記憶としては。チルノの物心がついたのは、こっちに引っ越してからですから。おそらく、ぼんやりとしたものだ と思います」
 首を横に振りながら、大妖精は答えた。
「でも、初めて呼んだときと同じ……。チルノは、私のことをお姉ちゃんと呼んでくれます。そう呼ばれるときは、いつだって私は同じ気 持ちになれます」

 ああ、この子と一緒にいられて、本当によかった。

「だから……」
 大妖精は、チルノの手を取った。
「だからこの手は、離せない」
 自分を姉と慕ってくれる少女を、絶対に見捨てることはできない。
「チルノ……!」
 大妖精は、そのままチルノを抱きしめた。
「ん……?」
 そこで、チルノが目を覚ます。
「あ、おねえ……ちゃん」
 状況が分かっていないのか、戸惑うチルノ。
「お、起きたの?」
「うん。ありがとう、チルノ……」
「そんな……。あたし、あたしなんか、何にもできなかったよ」
 抱きしめられながら、チルノはうつむく。
「それでも……ありがとう……」
 優しく、だけどよりいっそう強く、大妖精はチルノを抱きしめた。
「……うん」
 そこでようやく姉が無事であることが認識できたのか、チルノの目に涙が浮かぶ。
「お姉ちゃあん……。よかったぁ……!」
 チルノも、姉に手を回す。
 おそらく、チルノが大妖精の真意に気づくことはないだろう。
 それでも。
 2人が2人でいられたのは、お互いがいてくれたから。
 だから。

 朝日の中、2人の声が重なる。
「ありがとう……」

 だから――。







 妖精2人は、午後になって家に帰ることになった。大妖精の体はもうだいぶ回復しているので、あとは家で養生するとのことだった。
「それじゃあ、私たちはここで」
「はいはい。お大事にね」
「本当にありがとうございました。朝食もおいしかったです」
「あはは。そりゃどうも」
「ほら、チルノ」
「ん……」
 大妖精が促す。しかし、何もできなかったことを気にしているのだろうか。チルノはうつむいたままだった。
「もう、お姉ちゃんを湖に落としたりしちゃダメよ、そこのおばかっ娘」
「お、おばかとか言うなっ!!」
 いきなり霊夢にけなされ、反射的に言い返すチルノ。
「そうそう、それでいいわ」
「へ?」
 霊夢は、チルノに笑いかける。
「元気出しなさい。おばかなあんたは、騒いでるときが一番いいわ」
「ま、またおばかとか言ったなぁー!!」
「ふふふ」
「お、お姉ちゃんまで!」
「……そんだけ元気があれば大丈夫ね」
「そうですね。それでは、いつかまた」
「今度は、元気なときに来なさいよ」
 霊夢に一礼して、大妖精は境内から飛び立った。
 慌ててチルノがそれに続く。
「お、お姉ちゃん、待ってよー!」

 昨日の身を切るような寒さはどこへやら。
 冬にもかかわらず、暖かな日差しが幻想郷を照らしていた。
 きっと、湖の氷も溶けていくことだろう。



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