「あ・・・」」
がくんと頭が落ちたところで、槙人は目を覚ました。早くに病室に来て、うたた寝をしていたらしい。
懐かしい夢だった。槙人は、自分が家を出た理由を、ようやく見出した。
(そっか・・・帰って、来たんだな)
完全に忘れていたので、今ここにいるのかが何だか不思議な気がした。
「やっと起きたね」
その時。
聞き慣れた声。
槙人は顔を上げた。
「綾華・・・!」
綾華が。目を覚ましていた。上半身を起こして、槙人を見つめていた。
「おはよう、お兄ちゃん」
「あ・・・」
嬉しかった。十日間、本気で心配した。あの時よりも、ずっと。綾香が助かって本当に良かった。
懐かしい声。思わず抱きしめたくなるくらい、本当に嬉しかった。
なのに。
槙人は動けなかった。笑うはずの顔は、凍りついていた。
「綾華・・・」
呆然と槙人は「それ」を見ていた。
そして、一言一言。言葉を紡ぎ出す。
「お前・・・その目・・・どうしたんだ?」
「え?」
そう言われて綾華はそばにあった手鏡で自分の顔を映した。
「な・・・!」
綾華のその右眼。
「何・・・コレ・・・!」
それは、銀色に。
まるで金属のように、冷たい光りを放っていた。
(まだまだあ)
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第5話その7|メニュー|
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